陶器に螺鈿(mother of pearl)を貼ってみた

鮑(あわび)貝の内側が綺麗に光っていたので、この光を陶器に貼り付けたら綺麗だろうと、貝の内側を削りとった破片を、黒釉掛けで本焼きしたワインコップの表面に貼って見た。最初は単純な思い付きだったが、キラキラ光る綺麗さ、これはいけるかもしれない。 螺鈿は、正倉院展や現代工芸展で見るその美しさに心打たれていたが、その細工の精巧さには別世界の伝統工芸として近寄り難さがある。一方でしかし、陶器に螺鈿を貼ったのを見たことが無いが何故なんだろう、そんな疑問があった。 陶芸は焼き物といわれ高温で焼くものだから、螺鈿は焼いたら当然消滅する。そこで素焼きした平板、菓子皿に貼ってみてはどうかと始めてみた。螺鈿の下地は黒色が映えるようなのでホームセンターに行って、合成樹脂製の水性、油性いろいろあるなかから水性の黒ニスを選んだ。その隣に同じ水性の透明艶出しニスがあったので一緒に求め、取り敢えず始めて見た。楕円形の板状素焼きに黒ニスを塗り、小片の螺鈿を、皿表面に散りばめるように透明ニスで貼っていく。合成樹脂は乾燥していくと高分子化し固化し、螺鈿は陶板に接着固定される。螺鈿は薄いといっても貼付面に凹凸が出るので、さらに透明ニスをその上から厚塗りして表面を滑らかにする。 出来上がりを見た時、菓子皿にしては重厚すぎ、むしろ室内飾りにした方がいいように見えた。香立てに用途変えしても使えそうである。その印象が、宝石を保管する四角や丸い陶箱や、香炉・香立て、壁飾り、鏡、時計へと思いを発展させていった。

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漆のもつ不思議な硬化後の永久不変性は言うまでもないが、合成樹脂の陶器との接着耐久性は未知である。経年変化で劣化・破損するであろうが、容易に修復が効く点では利点とも言えよう。 螺鈿細工に実際に用いた材料を作業に準じて列挙すると、信楽粘土を板状や陶箱に成形し(粘土の成形方法は省略)、乾燥後780-800℃で素焼きする。その素焼き表面を水性アクリルニス((株)アサヒペン)で「黒」塗りする。その表面に螺鈿(藤井漆工芸・東京)を水性艶出し透明ニス(アサヒペン・東京)で、螺鈿の反射色を確認しながら貼り付ける。乾燥後、作品の用途によっては、特殊アクリレート樹脂のUVレジン液で上塗りし、紫外線(日光)に当てて硬化させ、本体を強化する。貼った螺鈿の手触りが気になる場合はニスやレジンを厚塗りして平面を滑らかにする。素焼き板をくり抜いて鏡や時計を嵌めた時の固定には、二剤混合接着剤のエポキシ造形パテ(株・タミヤ)で隙間を埋めるようにシーリングする。その作業前に素焼き側に瞬間接着剤のアロンアルファを素焼き部分に沁み込ませておくと接着が確実になる。割れたり折れたりした素焼きの接着にはセメダイン・スーパーを用いる。今回の作業の中にはないが、陶製食器には、その内面を、食品衛生法で認可された接着剤(例:アロンアルファ)や塗料防水仕上げ液(株:パジオ・東京)を上掛けする。多種多様の合成樹脂製の接着剤や塗料があるので用途目的に合わせて利用するとよい。なお、作品の金彩の部分は、画材の金泥を水に溶かし、金色の沈殿部分を乾燥し、ニスに混ぜて塗って硬化させたものである。 

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陶器に螺鈿を貼る、思いつくまま、試行錯誤的に幾つか作ってみた。本体の素焼き部分の強度がどの程度のものか不明であるが、1250℃の本焼き素材への螺鈿の接着性も、最初の2~3例だけで、まだ不確実である。漆に代わる合成接着剤が発展し、どこまで陶器を破損から守れるようになるのか、さらに、螺鈿そのものを知ることもこれからで、平面だけでなく曲面への板状螺鈿の貼り方もこれからの研究テーマである。

(三田 隆:H29,6 9)


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